ベッド上で安静にしている患者が関与出来る環境は本人が手の届く範囲である。特に ベッドガードなどで動きが制限されている患者は 、 自分の意思を実行す る ために設備的な配慮が必要となる。 ここで言う設備とは主に個 別の照明や空調(可能な場合)などを制御するスイッチ類であり、日常使用する物品を配置する収納設備であるが、今日ではパソコンやスマートフォンの使い勝手や病室内の使用についてのルールなども物品の配置に関わってくる。 個別照明のスイッチなどは従来からベッドに近い位置の壁面に設置されているが、これが 健常者にとっては近いように思えてもベッド上の患者にとっては入り切りに苦労する距離なのである。 ナースコールのリモコンと一体化するという考え方もあるが、あまり複雑なリモコンであると緊急時の呼び出しに支障があるかもしれない。そこで、日常使うスイッチだけをまとめてリモコンに配置することは出来ないだろうか。最近では住宅のスイッチの多くがリモコンになっていることを考えれば、困難なことではないと思う。 一方収納設備であるが、常時使用する物品のスペースとしては、奥行きよりも間口を確保して手が届き易い棚の上に必要な物品があるという形態が好ましいのではないか。その際地震対策として、手前に低いガードの設置は必要である。着替えなどには奥行のある収納設備が好ましいが、これらは日常手の届く範囲にある必要はない。このように患者が使用する物品の種類を見極め、適切な収納方法を工夫する必要がある。頭床台の上をテレビが占有する現状は 必ずしも入院患者の使い勝手に配慮しているとは言い難いのである。 例えば、 取り出しやすい位置にティッシュ、本、時計、お茶のボトル、スマートフォンなどの置き場があり、鍵のかかる引き出しに財布などの貴重品がある。そしてやや離れて予備の衣類などの収納スペースを配置する。こうした 収納設備についてその合理的な形態と規模を導き出すためには、患者が必要とする物品の内容をヒアリングし、運営側の判断を交えて適切な収納設備を計画する必要がある。使い勝手の良い物品管理は患者だけでなく、病棟をを運営するスタッフにとっても効率的な職場環境に寄与するものである。
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