患者の療養環境にとって大切な要素であるベッドについて考えたい。身動きの取れない 患者には身体に近い場所から切実な問題が発生する。とりわけ絶対安静の状態にある患者にとっては、ベッドまわりが環境のすべてである。我々は静かに寝ている状態でも少しずつ体を動かしながら、リラックスした状態を保っているが、絶対安静の患者はベッドによって与えられた環境に身をゆだねるより他ないため、横たわったままによる苦痛の解消は切実である。 重症化すれば床ずれなど様々な症状が発生するが、その前に安静状態で長期間横になっていいれば、背中の痛みなどの苦痛が伴う。 医療用のマットレスは、寝心地以外に、看護のし易さ、掃除のし易さ、耐久性など様々な要素で決められているのであるから、 必ずしも 絶対安静の患者や 長期間の入院を余儀なくされた患者にとって十分に快適な環境であるとは限らない。しかしながら様々な条件をクリアして、 出来る限り患者の立場で快適な療養環境をを見出すことは、結果的に体力の回復を早める意義がある。例えば マットレスの快適さについて、実際に使用している患者からヒアリングをすることも改善には有効な手法ではないだろうか。どのようなところが苦痛か、どのようにすれば良いか、言葉によって理解することも必要だと思う。患者の入院期間、安静状態、疾患の内容などとの関連性も把握し、その結果がマットレスの性能に反映されれば良い。その際、求められるマットレスは1種類であるとは限らない。 環境という側面から療養について考えるならば、24時間臥位という同じ姿勢を取るのではなく、少しでも日常の姿勢に近付けるために休息や睡眠の姿勢に変化を与えることも必要ではないだろうか。一定の時間を座位で過ごすことで、安静時の肉体的・精神的な苦痛を和らげることはできる。背中を起こすだけではなく、足をおろして完全な座位になれるベッドもある。これからの医療用ベッドは臥位、半臥位、座位など患者が様々な姿勢をとれるように、快適な環境を積極的に補助する役割が必要ではないかと思う。 従来病院建築は、建物本体が完成すれば設計者の役割はそれで終わりで、ベッドの搬入はその後行なわれていたのであるが、療養環境を完成させるという意味では、ヒトと環境とのインターフェイスとなるベッドの性能を見極めることが重要な要素であると考える。 ...
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